強引年下ピアニストと恋するカクテル。
同い年の颯太くんとは違う。儚げな美少年。テレビで見るよりも、消えてしまいそうなほど弱々しい少年がそこに座りこんでいた。
彼みたいに天使だ、天才だともてはやされる子には、その子なりのプレッシャーがあるんだと、気付いた。
だから、自分だって緊張してるのに、怜也を励ました。
『鍵盤に並んだ音は、全部違う音色なんだよ。その音を喧嘩させずに綺麗な音色で弾いてあげられるのは、ピアノが好きだって気持ちを持った私達だよ』
うずくまる男の子の横で、大人に借りてきたテープで楽譜を修正しながらそう告げた。
『君の弾く音色は、誰でも出せるわけじゃない。君にしか出せないんだよ。正直、とっても羨ましい音色だもん』
顔は見れなかったけれど、私が何度も励ますうちに彼は『……弾いてみる』と小さく呟いた。
なので私は『じゃあ私の番だから』と彼を残してステージへ上がった。
その後はステージに上がって緊張しつつも無事に弾き終われた。
そのまま頭が真っ白になっていた私は彼を忘れて親の元へ帰ってしまったんだった。