強引年下ピアニストと恋するカクテル。

「みい……じゃなかった美緒?」
不自然な呼び方に脱力してしまう。
「颯太くん! どうしてここに?」
パーティの主役である店長が何でここにいるの?
驚いたけれど、颯太くんは私の真っ赤な顔を見て眉をしかめる。
「あいつとスタッフルームでやっぱり何かあったのかなって。みい……美緒に何か言ったのか? 真っ赤だけど大丈夫?」
「あ、違うの。ちょ、ちょっと言葉が乱暴で怖かったけど何もなかったよ。その……あの私の方こそ、勝手に憧れて幻滅したと誤解されたかなって」
「……素の怜也を見て幻滅しなかったの?」
「え、う、うん。無理に自分を着飾るよりはあんな自然体な怜也君の方が私は好きだよ」

そもそも演奏にその人の人格は関係ないし、とあははと笑うと、颯太くんは少し考え込んだ様子で黙る。
けれど、ハンカチを取り出して私に差し出しながら笑った。

「まあ不機嫌にして美緒を慌てさせた罰だ。俺は怜也のフォローしてやらない」
「……颯太くんは仲がいいのに?」
意味深な颯太くんの言葉に首を傾げつつ尋ねた。
「さあ。今日からは仲が悪いかも」
「何それ」
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