強引年下ピアニストと恋するカクテル。
「お疲れ様でした」
沸々とした気持ちを静めたくて、私は『ブリリアント』へ向かう。
ここ数日、怜也くんはホテルから出て来ないらしくて颯太くんも心配していた。
今夜あたりいい加減出てくるかもしれないから、BARで待たせてもらおう。
言い訳を考えつつ、あの恐ろしく煌びやかなビルへ足を速めた。
『今日はグランドピアノのメンテナンスがあって20時からの開店なんだ。けど副店長には話しておくから先に入っていいよ』
いつもの時間に向かい、駅で確認のメールをしたら驚きの返信に項垂れる。
うわあ……。颯太くんがいないであのBARに一人とか無理だ。
『お姉ちゃんもいないの?』
『今日は衣装の最終確認なんで遅くなるんだ。ちょっと美雪また痩せたらしくてドレスの身を詰めなきゃらしい』
あの人、これ以上痩せる場所なんてあるのだろうか。
胸?
そんな馬鹿みたいな考えが頭を過るが、その思考はすぐに止まった。
BARに入る前から微かに聴こえてくる。