強引年下ピアニストと恋するカクテル。
シェーカーを振るのを見るのは、ドラマや映画以外ではないのでつい目で追ってしまう。
「俺のフレアバーテンディングは派手だけど下品さが無くて、一流だよ」
「ふれあばーてんでいんぐ?」
初めて聞く言葉に首を傾げると、怜也君は傲慢に見るほど勝気に笑った。
「では、今日は可愛らしい美緒に」
そう言うと、シェーカーと空いたお酒の瓶をくるくると宙に回せたり、腕に乗せたり、目にも止まらぬスピードでシェイクしていく。
「わ、すごーい!」
思わず拍手と共に歓声が上がる。
くるくると回転する瓶を音もなくキャッチしてまた天井に届くほど高く放る。
その弧をなぞる様な動きが、洗練され美しくて思わず拍手してしまった。
「颯太のじいさんが別荘にBAR作っててさ、見よう見まね」
「独学ってこと? それでも凄い!」
実は怜也君と二人っきりは気まずいと言うか、変な意識をしまいそうで空気が重かったんだけど、そんな気分を吹っ飛ばすほど魅了された。
「やっぱその綺麗な指は器用なんだね」