強引年下ピアニストと恋するカクテル。



一瞬、目の前がブラックアウトして三途の川が見えるかと思った。

……今、なんて言ったの?

聞き間違い、だよね?

「ピアニストなんて止めたいって思った日も、普通の高校生とか社会人とかやってみたいって思った日も、――アンタの言葉で乗り切れたし絶対に嫁に貰おうって、迎えに行こうって思ってたんだ」

握られた手がぎゅっと力強くなる。
吸い込まれそうな瞳は、だんだんと私の顔に近づいてくる。


「あんたが、テープで繋げてくれた楽譜はまだ持ってる。颯太なんかに取られたと思ったら、――世界が終わったきぶんだったんだ」

「うそ、わ、私をからかってるんだよね」

酷い。
そんなに情熱的に、口説かれているような錯覚をしむけてくるなんて、酷過ぎる。

「からかってるように見える?」

握られた手を強引に怜也の胸に押し付けられた。

すると、私の胸の音よりも早い。バクバクと波打つ心臓の音が聞こえてきた。


「すげえ余裕がないだけなんだ」

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