強引年下ピアニストと恋するカクテル。
悲痛な眼差し。
良く見えれば、耳が真っ赤だ。
綺麗だと、天使だと思っていた相手が、――こんな風に男に顔をして私を見るなんて。
「脅しじゃなくて、惚れた相手としてキスがしたい。いい?」
甘えた声で、ねだる。
年下のな、生意気そうな男の子にも関わらず、そんな風にストレートに言うのはずるい。
「っ」
けれど嫌じゃない。
嫌じゃないから動けずにいると、この前の怜也くんがフラバする。
私を追い詰めて獰猛な瞳でキスしようとしたあの時の怜也君に――。
「いやあ、ごめんね、本業の方が終わらなくて――」
ひょいっとドアが開く音がする。
慌てて私から離れると、怜也君は残念そうに舌を出した。
「残念、もう少しだったのに」
「なっなっ」
「仕方ねえよな。芸能人がテレビから飛び出して自分の妄想みたいに都合よく動いてるように見えるんだろ。だから素直になれないんだよな、まだ」