強引年下ピアニストと恋するカクテル。
帰ってきたら颯太くんの胸ポケットにでもねじこもう。
「ってかもしかして、こんな遅くにここまで一人で来たわけ?」
ムスッとした愛想のない顔で言われて、財布を直す手が止まる。
「そうですけど」
「お前、馬鹿じゃねえの」
大声で怒鳴られ、店長も驚いて視線を向ける。
「な、何なんですか!」
「駅まで俺が送るから、勝手に帰るなよ!」
「え、ちょっと!」
文句を言おうとしても、彼はさっさとピアノの方へ歩いて行ってしまった。
その背中からは、話かけるなとピリピリしたオーラが伝わってきた。
「何あれ、横暴すぎる。駅からここまで歩いてすぐだし危険なんてないのに」
ぶつぶつと私が本人に言えない文句を零していたら、クスッと副店長が笑う。
「彼はそんなに悪い人ではないですよ」
「悪い人です。少なくても私には、颯太くんの記念パーティを台無しにした悪い人です」
「本当ならこんな場所で演奏してくれる人じゃないんですよ。世界ツアーの前にこんな時間を作ってもらえて」
「……でも感情で行動して大人げないと言うか」
怖い人。嫌な人。乱暴そうな人。生意気で偉そうな人。
私にはそれだけでお近づきになりたくない人だ。