強引年下ピアニストと恋するカクテル。
「『鍵盤に並んだ音は、全部違う音色なんだよ。その音を喧嘩させずに綺麗な音色で弾いてあげられるのは、ピアノが好きだって気持ちを持った私達だよ』って、お前は発表会前の俺に魔法をかけた」
「そ、それは」
「俺は五歳でお前が六歳ぐらいだったかな。颯太もいたっけ。あいつはピアノじゃなくてヴァイオリンに移動したけどな」
頭の中が整理できずに混乱してくるけれど、慌てる私を見てちょっと諦めたような大袈裟なため息を吐いた。
「天才だと持て囃されていた俺には、弱音を吐く場所とか甘える場所がなくて。強制ばっかはって無理して営業した顔作ってさ。そんな俺を差し出してくれたんだ、アンタは」
もっと自信を持てよ。
優しい口調で言われて、散々今まで強い口調だったせいもありさらにどまどった。
「もういい。どうせ今の俺をこれから知ってもらわねえといけないんだから、過去は後からでも良いや」