強引年下ピアニストと恋するカクテル。
「えっと、私……こっちのちょっと乱暴だけど素の怜也くんの方が好きだよ。自由だし綺麗なはずなのに芯があって恰好良いと思いますし」
「その敬語、止めろ。俺の方が年下だし。ピアノ歴も下だ。普通に話せ」
(じゃあ貴方もその高圧的な話し方を止めてよ)
と口には言えずに、頷く。
憧れていたと思っていたはずなのに、憎めない部分を知ると一気に可愛いと思ってしまった。
ツンツンしているくせに、意外とナイーブで傷つきやすい性格。
(そんな彼の繊細さがやっぱりピアノに出てる気がするなあ)
「あの、私も」
「ああ?」
「貴方のピアノは嫌いじゃないよ。繊細で余韻も美しくて」
素直な気持ちを伝えただけだった。
それなのに、彼はあからさまに顔を歪ませて視線を逸らした。
(怒らせちゃったかな?)
けれど、ふと逸らされた横顔を見たら耳が真っ赤だった。
(これってもしかして?)
「もしかして、照れてる?」
「っそうだよ。馬鹿じゃねえの! あんたはいつも俺の事を簡単に喜ばせちまうんだよ!」