強引年下ピアニストと恋するカクテル。
「浚っていこうか? ロスに」
「ばっ」
「本当は今すぐにでも浚いたいんだけど我慢してるんだ。偉いだろ」
一言、投げ捨てるように言い放つと歩道橋の向こう側から誰かが登ってくる声が聞こえたので急いで下りて駅へと向かう。
乱暴な言葉の端々の中にある優しさに気付いたら、初日の嫌悪感が嘘のように消えていく。
(もう少し彼の事が知りたい)
(でも彼とまた会えなくなった時、辛くなる)
自分と彼の接点は今、ここしかない。
それなのにブレーキもせずにぐいぐい来る彼にどまどう。
でも、今宵は誤解していた彼の優しさに触れた日だった。