強引年下ピアニストと恋するカクテル。
小さな唸り声を出しながら空を見上げる。
駅から、仕事場のレッスン教室までの道もサクラの花が咲きだした。
(ようやく進級試験も終わったんだし、自分にご褒美をあげたい)
それに、励ましてくれた彼にお礼も言いたい。
「おーい、美緒」
「颯太くん」
駅の入り口に飾られている大きな時計を見上げていたら、後ろから声をかけられた。
「難しい顔してるけど、どうしたんだ?」
「颯太くんのBARに行きたいけど、夜道を一人で歩くなっ言われたから悩んでたの」
「そうなんだ。じゃあ俺が来たら解決だね」
颯太くんが優しく笑うので私も微笑み返した。
駅前の雑貨屋の前を通り過ぎようとして颯太くんが足を止める。
「そういえば、この前、俺が居ない日に来たんだっけ」
「うん。仕事で凹んでたから行っちゃった」
「その日からやたら怜也のやつ機嫌がいいんだけど、何かあった?」