強引年下ピアニストと恋するカクテル。
「……」
落ち込んでいるはずの怜也くんの顔がフッと真剣な顔になって私の顔を覗きこんだ。
「それを伝える為に、駅まで走って来てくれたのか?」
「うん。誤解されたまま会えないくなるのは嫌だったし」
「俺に誤解されたら嫌って、……それって期待していいのか?」
急に怜也君の目が光り出した。
その真っ直ぐな瞳に見つめられると、今度は私が目を逸らし逃げ出す。
けれど、それより先に怜也くんの腕の中に捕らえられ抱きしめられた。
「ちょっと、痛い」
「あの時、伝えられなかったこと後悔した。あんたの弾くピアノもアンタも、すげえ好きだったよ」
「く、くるしい、です」
なんとか身を捩って彼を見上げると、いつものツンツンした顔ではない。
蕩ける様な甘い表情をしていた。
「で、今、もう一回好きになった。追いかけてくれた優しいあんたを、好きになったから」
「え、ええ?」
「照れるあんたも、めちゃくちゃ可愛い」
嬉しそうに笑いながら、怜也くんは私の唇を指先でなぞった。
優しく、なぞった。
彼がピアノを繊細に奏でる指先が、私に触れている。
そう思うと、なんだか私までドキドキし出した。