強引同期に愛されまして。
過去の男を振り切って仕事にまい進する私の目に飛び込んできたのは、いつだって安請け合いをして仕事をとってくる田中くんだ。
「このスケジュールでできると思ってんの?」
「そこをなんとか。頼むよ三浦」
できない、なんてプライドにかけても言えない。
夢中になって仕事に取り組んでいるうちに、梶くんを思い出す日は少なくなっていた。
そして、無理難題を何とか片付けると、いつも田中くんは笑う。
「やっぱり三浦は頼りになるな」
私はバカなのかもしれない。
こんなに迷惑な男なのに、頼られればやっぱり嬉しいのだ。
その嬉しさが、日ごと積もっていき、いつしか私を満たしていく。
それが恋なのかどうか、自覚することを避けたまま(なぜなら、田中くんを好きになるなんて、なんとなく屈辱だからだ)私は日々を過ごしていた。
しかし半年ほど前、自覚せざるを得ない出来事に遭遇した。
元カレである梶くんと再会したのだ。
彼は海外転勤を終えて日本に帰ってきていて、以前と変わらぬ誠実な顔で、私によりを戻そうと言った。
心が動かなかったわけじゃない。だけど目の前に田中くんがちらついて、私は頷けなかった。
友人たちが、そんな私を白い目で見ているのは知ってる。
こんな優良物件、逃すなんて信じられないって。
わかってるよ、でも。
好きになんてなるはずないと思っていた男が、私の前をうろちょろするんだ。
迷惑ばっかりかけて散々振り回して、私の中から消えてくれない。
「やっぱり三浦との仕事が一番楽しいな」
何の気なくそんなことを言っては、私の心をくすぐるバカ野郎。
梶くんに再会して、余計思ってしまった。
すべてスケジューリングできるようなものは、所詮恋ではなかったんだと。
彼の申し出は嬉しいけれど、やっぱり頷けないのは、少なくとも今、私が梶くんに恋をしていないからなんだ。