強引同期に愛されまして。
「知らないし。それよりさ、あのっ……した?」
私今たぶん真っ赤だ。しかし田中くんは頓着しないようにあくびをしつつ、眉をひそめた。
「知らん」
「知らんって何よ、重要な問題でしょ」
「じゃあしてない……と思う。つか、お前も覚えてないなら同罪だろうよ。あれだけ酔っぱらってたんだ。そんなことする気力ないだろう」
まあ……そうだな。
田中くんに言いくるめられるとか心外だ。落ちつこう。
まずここがどこなのか。
私の部屋ではないのは確かで、これだけくつろいでいるところを見ると、田中くんの家なんだろう。
十畳ほどの一人暮らしには広めの部屋だ。ベッドとローテーブルとサイドボードがある全体的にシンプルなモノトーンな部屋。何よりも意外だったのは、本棚があってぎっしり本が詰められていること。短慮そうな男なのに、本なんて読むのか?
「私、なんで田中くんの家に来ちゃったの?」
「お前、タクシー乗る直前に吐いたんだよな。で、いろいろ片づけとかしてたらテンパっちゃってさ。無意識に自分の住所を言ってたみたいなんだよ。で、タクシー揺られてるうちに俺も眠くなっちゃってさ。酔ってもいるし、自分ちについたの見て改めてお前の家に送っていくとか面倒でしかないし。だからうちに連れてきた」