強引同期に愛されまして。
「んだよ、何すんだよ」
「今無防備なんだから見るな!」
「今更だろ。さっきのほうが無防備だったじゃんかよ」
それを言うなぁ!
先ほどまでの濃厚な絡み合いが思い出されて、頭に血が上る。せっかく冷やした頭が台無しだ。
「うるさい! 出てて!」
シャワーを向けるとさすがにビビったのか、すぐさま扉は閉められた。半透明の扉にむなしくシャワーが当たる。
私は片手にシャワーを持ち、もう片方で胸を隠しつつ肩で息をする。
つ……疲れた。
ペース崩されまくりだわ。
大体、一度は寝ちゃったとはいえ、彼女でもない女が裸でいるのよ? 恥じらえよ、そっちこそ。
そりゃ三十歳なっちゃったけどさ。まだ衰えは見えていない体のはずよ?
それともなにか、あいつにとって私の裸なんて見ても見なくても変わらないようなもんなの。
イラついてる自分にもまたムカつく。思わず浴室の壁をバンと叩いてしまった。
「……なんで私が落ち込まなきゃならないのよ」
釈然とせず、私は再び滝行ならぬシャワー行を始める。濡れるとパーマのウェーブがくっきりと出て、まるで水滴が遊ぶようにショートボブの毛先ではねる。
腕に落ちた水滴は、きれいな粒を残したまま流れていく。ほら、まだ大丈夫。水もはじく肌だわよ。
「はあ」
下腹部の重みに、思わず出るため息。意外にも体の相性はかなり良かった。そんなに男を知っているわけじゃないけれど、最初からこれだけ気持ちよく感じるというのはいいほうなんだろうと思う。
だがしかし、本当にこれでよかったのかは疑問だ。
後悔しているわけじゃないけれど、私たちの関係性を考えれば、軽はずみだったような気がする。
もう、忘れよう。
今日のことはぼっち期間が長すぎたゆえの気の迷いよ。
どうせ、田中くんだって遊びのつもりなんだろうし、自分ばかりが動揺するなんてまっぴらよ。