強引同期に愛されまして。

 シャワーを終え、タオルを巻き付けて出ると、テーブルにはコーヒーが淹れられていた。
シャツを羽織っただけの田中くんは、意外に厚い胸板をチラ見せしつつ待ち構えていたように立ち上がった。


「お前遅いから冷めちゃったぞ」

「え……」

「俺もシャワー浴びてくる」


見れば確かに、テーブルにはコーヒーが用意されていて、カップからは湯気が上がっていない。
田中くんが浴室に消えたのを確認してから、飲んでみるとぬるい。だけど美味しい。酸味のある苦みで、頭の中がすっきりしてくる。

さっきの浴室乱入は、もしかして、私を呼びにきたってことだったのかしら。


「……っ、もうっ、なんなのよ」


顔が熱くなるのがわかる。落ち着け私。
相手はあの田中くんよ? なのになんでこんなにドキドキするのよ、悔しいったら。

ぬるいコーヒーを一気に飲んで、急いで着替えをすます。
服はジャケットとワンピースが床に転がっていて、ストッキングがベッドの中にあった。しかも膝のあたりが破れている。仕方なく、鞄に入れていた替えのストッキングを履いた。

さて、どうしよう。
王道的な流れで行けば、とりあえず置手紙でもして帰ればいいのか。
でもなぁ……と悩んでいるうちに、早々に彼がシャワーを終えて出てきた。

下はスウェットみたいなのを履いているけれど、上半身は裸だ。平気な顔でタオルで頭拭かれてもな。目のやり場に困るから何か着てほしい。
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