強引同期に愛されまして。
「で、どうする?」
田中くんはおもむろに私に問いかけた。見ないようにしているので表情は読めない。
どうするってなんだ。これからの予定ですか?
「どうするって何が?」
「とりあえず同棲でもしてみる?」
はい?
話が見えませんけど?
驚きすぎて彼のほうを向いて、思いっきり裸の胸を見ちゃって目をそらす。
とっとと何か着ろよ!
田中くんは私の挙動不審さは気にした様子もなく、つかつかと近づいてくる。
「だってさ、三浦だってそろそろ三十だろ? 遊びで付き合う歳じゃないだろ」
もう三十になったわよ、というツッコミができなかったのは、彼の言葉が意外すぎたから。
遊びで付き合う歳じゃないって、え、どんなつもりで付き合うのよ。てか、そもそも……。
「私たち、付き合うの?」
「へ……」
一瞬間が空いたので、不審に思って彼の顔を見つめる。いつの間にかタオルが首にかけられていて、胸元が隠されたことにはほっとした。しかし、別のことに動揺する。田中くんの顔が、真っ赤になっているのだ。
「お前、俺を弄んだのかっ?」
「はっ?」
コケるかと思った。なに乙女みたいなこと言ってるんだ、この男。
「違うわよ! 人聞きの悪いこと言わないで。ただ、そんなこと言われると思わなかっただけよ」
「そんなことって……その気がなかったらあんなことはしねぇだろ」
しない。確かに。その考えは真っ当だ。
むしろ田中くんにそんな良識があったことを喜ぶべきだと思うくらい。