強引同期に愛されまして。
ただ私は、その可能性を全く考えていなかった。
だって田中くんはちゃらんぽらんで女の子とみれば誰にでも「付き合わない?」とか声をかけては振られ、飲み会となれば絡んでくるし、うざいことこの上ない人なんだもの。
……ああ、考えて悲しくなってきた。なんで私、こんな男が好きなの。
待って落ち着こう。
好きな男にこんなこと言われたら普通嬉しいはずよ。
でも私、なんでか現実味を持てない。
田中くんと付き合う私?
一緒にスーパーで買い物とか、手をつないで出かけたりとか?
いやいやいや全然想像つかないし、思い描けもしない。
あまりに何も言わない私にしびれを切らしたのか、田中くんはチッと舌打ちすると戸棚から何かを取り出した。
「とにかく。……ほら」
差し出されたのは、銀色に鈍く光る鍵だ。
防犯対策用の簡単に複製できないタイプのヤツ。意外とこのアパート、セキュリティはしっかりしてるのね、なんて頭の片隅で思う。
「もらっていい……の?」
半信半疑で聞くと、やっぱり嫌そうに眉をしかめられた。
「お前やっぱり俺のこと遊んでたのかよ」
「や、そんなことはないんだけど」