強引同期に愛されまして。


「あ、三浦も来たな。すんません、お待たせしました」


田中くんが小さなお盆に紙コップを四つ乗せてやってくる。
私はコーヒーと田中くんが持ってきた資料を配るのを手伝った。


「田中、人を呼び出しておいて遅いぞ」

「九坂さん、睨むの辞めてくれませんか!」


さすがの田中くんも、九坂さんは苦手なのね。
書類で顔を隠して笑ったら、睨まれてしまった。


「えっと。お忙しいところ時間とってもらって申し訳ないです。今回の成城学園のシステム化なんですが、学校のほうから心配されているのは、そのネットワーク環境なんですよね」

「サーバーを置いて、無線LAN組んで……だろ? トラブルが起きてるやつの大半は家庭向けの機器をいれてるから悪いんだよ。学校ってとこは教室単位でアクセスするから、最低でも四十台が一気に繋ぎに行く計算をしなきゃならねぇんだ。よっぽどスペックのいいもの導入しないと。そのくらい学校関係者だってわかってるだろうに」

「でも予算がそこまではないんですよ。できるだけ押さえたいっていう方針でして」

「つながんないとなれば授業にならないんだから、初期投資として必要だって言いくるめるのがお前の仕事だろうが」

「そうなんですけど、一気に導入したいけどお金がないってのはクライアント一般の悩みなんですよ」


田中くんが言うと、九坂さんがすぐさま反論する。

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