強引同期に愛されまして。

「今回のような運用をする場合、通信環境がうまくつながらなければ何にもならない。節約するところはそこじゃないんだよ。金がないなら、ほかの機能を後回しにしてでも通信周りには金をかけろ。まして無線LANにはトラブルはつきものだ。導入後のサポートだって入ってもらわねぇと揉める元だぞ」


「うーん。だとすると最初に提案できる機能は大幅に制限されますよね。いわゆるハードを買ってソフトを買わない状態になるんじゃ、ユーザーは食いついてこないんですよ」


一度に支払える金額は限られている。
だからと言ってハード面にばかり投資しては、目に見えた効果は出てこない。
わかりやすく言えば、ゲーム機を買って、ソフトを買わないような状態だ。実際に使えないんじゃ何を買ったのか、という気持ちになるのも当然。騙しているようでもとりあえず動く環境を作ったほうがユーザーの満足度は上がる。

それは私も九坂さんたちもわかっているだけに、みんなで黙りこくってしまった。


「……他の学校から出た不満ってのをしっかり聞き取ってこればどう? それに対してのこちらからの提案という形のほうが話しやすいし納得してもらえるんじゃないかな。お客様に不安があるのは当然じゃん。それを逆手に取ればいいんだよ。こういうことが不安です、に対して、うちの会社ならこうできますっていうのを打ち出していくわけ。逆にその辺を飛ばして契約を焦るとかえって失敗すると思うな」


三笠さんがぽそりと言って、九坂さんが片目を上げる。


「……確かにな。三笠、いいこと言うな」

「女性関係も一緒ですからねー。不満を漏らした時がチャンスってこと」

「言ってろよ、タラシ」


CE同士の言い合いには、突っ込みどころがわからないので苦笑いを返す。
でも私も、三笠さんの提案は客の心情に沿う形だからいいと思う。後押しするつもりで一声かける。
< 33 / 100 >

この作品をシェア

pagetop