強引同期に愛されまして。

「そうね。それに今の業務の不満点を教えてもらえれば、それを解決に導くようなソフトの提案もできるわ。まずはじっくり話し合ってもらったほうがいいのかも」

「そういうことだ。ってことはまずお前がしっかり聞き取りをしてくることだよ。いいか、田中」

ポン、と肩をたたき、九坂さんが立ち上がる。


「はあ」


さえない声を出すのは田中くんで、三笠さんは九坂さんの後に続いて立ち上がると、「三浦ちゃん、今度一緒にご飯行こうね」と相変わらずのタラシ全開なことを言ってウィンクまでして去っていった。


「……あー、もう一回客先と話さなきゃダメかぁ」

「そうね。ていうか、あんたに欠けているのはいつもそこよ。人の話をじっくり聞けないのがトラブルの元のような気がするわ」

「そんなことは」

「あるの。逆に、話を聞ければいいって言ってるのよ。直すところが分かっているなんて楽なことじゃない」


思っていることを言ったら、田中くんがこっちをまじまじと見ていた。


「そうか」

「そうよ」

「わかった。行ってくる」


突然立ち上がるから、慌てて止める。


「ちょっと待って、今ここで、何を確認しなきゃいけないかまとめてから行きなさいよ!」


勢いで動くそれがだめなんだって。


「あ、そうか」


いつもなら、適当に言い返していなくなる田中くんが、今日はそのままおとなしく座り、私が言ったとおりに手帳を広げて書き始める。
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