強引同期に愛されまして。

「……田中くん、そのメモの内容、ちゃんと暗記していきなよ」

「なんで?」

「メモ見て話されると、こいつわかってんのかなって心配になるから」

「あー、なるー」

「……コーヒーもう一杯飲まない? 淹れてくるわ」

「おう」


なんか。田中くんが素直だ。

コーヒーを持ってきたら、サンキューとか言うし。
「字、間違ってるわよ」なんて言おうものならすぐ文句言うのに、今日は静かに直している。

なんだろ。なんか、ちょっと嬉しいかも。


「じゃあ私もそろそろ行くね」


二杯目のコーヒーを飲み終えて立ち上がると「んー」と生返事がある。どうやら集中してしまったらしい。
そのまま私はその場を立ち去り、システム開発部に戻った。


「三浦さん、待ってましたー!」


するとそこには質問待ちの輩がたくさん待っていた。


「いや、渡辺部長だっているんだからそっちに聞きなさいよ」

「部長にこんなこと聞くの失礼かと思って」


私にだと失礼じゃないのかよ、とは思ったけれど、まあいいや。


「よし、順番に来なさい。要点まとめてね」


通る声で言うと、みんなの背筋が伸びる。気持ちいいよね、こういうの。案外教師体質なのかなとか自分で思っちゃう。

皆の質問を片付けて、自分の仕事のキリの良いところまでやったらもう七時。
無駄に残業するのも怒られる今日この頃。とっとと帰ろう。


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