強引同期に愛されまして。
3.一緒に住むって本当ですか


まあ、私も何も言わなかったけれど、特に田中くんから誘いがあるわけでもなく。
約束もないなら待っているのも変かな、なんて思って帰路についた。

歩きながらなんとなく苛立つのはなぜなのだろう。

あの一晩は夢だったんじゃなかろうか。
だって今日一日、今までと変わらない生活だったよね。
会社行って、仕事の話してただ帰って……。甘い言葉もメールもない。これって付き合ってるなんて言わないじゃん。
イライラしている自分にも腹が立つので、考えないように小走りになる。

ご飯を作る気分でもなく、帰りはスーパーに寄って、値引きされたお惣菜を買った。
自炊が日に日に面倒に感じるのはひとりで暮らしているからだろう。これでも梶くんと同棲していた時は交代でちゃんと作っていたのだから。楽に流されるのが人間ってやつよ。

お湯を沸かしてお茶を入れ、お惣菜をおかずにレンジで解凍したご飯を一口食べたところで、携帯電話が鳴る。画面を見て、相手が田中くんだったことでむせてしまった。


「ごほっ、もしもし?」

「お前、どこにいんの?」

「どこって、自分ちだけど」

「はぁ? なんでこっちに来ないんだよ」

「なんでって。来い、なんて言わなかったじゃないの」

「……鍵渡しただろ?」


急に声が潜められる。
あ、顔を真っ赤にした田中くんが、今想像できてしまった。
そうしたら、つられたみたいに私までドキドキしてきた。急に手汗が出てきて自分でも焦ってしまう。

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