強引同期に愛されまして。
「あんたこそ、うちの給料でよくあんな高そうなところに住んでるよね」
「ああ? あそこは親族価格だから高くねぇし」
「親族価格?」
「親の持ってるマンションなんだよ。まあその話はいいだろ。それよりいい匂いする。俺腹減ってんだよな」
親のマンション?
なんか聞き捨てならない言葉が聞こえたけど。
不審がる私を押しのけるようにして中に入ってきた彼は、ご丁寧に玄関のカギとチェーンを閉め、先に部屋に入っていく。
「すげぇ旨そう。お前、料理なんてできたんだな」
「いちいち失礼だから。十年以上ひとり暮らししてて出来ないほうがおかしいでしょ」
「それもそうか。なあ、俺も食っていいのか?」
当たり前だ。アンタのために作ったようなもんよ。
でもそれは言わずに、「まあ、食べてないならどうぞ?」とだけ返す。
連絡が来てから炊いたご飯をよそり、ふたりで食卓を囲む。両手を合わせて「いただきます」とお行儀よく挨拶するのがおかしくて、ついつい見つめてしまった。
「うまい! お前料理上手なんだな、すげー意外」
「意外は余計よ」
憎まれ口をたたきつつ、緩んでしまう頬を押さえるのに精いっぱい。なんだろ楽しい。だって、こんな子供みたいに笑いながら食べられたら、誰だって気が緩んじゃうよ。