強引同期に愛されまして。

「お、お湯、沸いたね」

「おう。……コーヒー豆、どこだよ」

「え、えっとねー」


何してるんだ、私。こんなの、まるで高校生の恋愛みたいじゃないの。
キスまでの距離でドキドキするなんて、セックスまで済ませてからやることじゃないでしょう。

結局一瞬だけ生まれた甘い雰囲気は、あっという間に流れていき、湯気の立ったコーヒーを前に再び私たちは向かい合う。


「おいしい! 嘘、私が淹れるのと同じ豆だよね。味が違う」

「そうかぁ?」

「この間もおいしいと思ったんだけど。豆が違うんだと思ってた。え? 淹れ方? なんか違うの?」

「最初ちょっと蒸らすんだよ。あとは普通に淹れるだけ」

「それだけのことで? 嘘。すごい」


素直に感想を言っただけなんだけど、目の前の男はなぜか顔を背けていく。


「ちょっと何よ」

「いや。……別に」


よく見れば、耳まで赤い。
拗ねてるんじゃなくて、照れてる? 
そう思ったら、こっちまでつられて恥ずかしくなってくる。


「……お前に褒められることなんてねーから」


やがてボソリとつぶやかれた言葉に、胸が突き刺されたような気がした。
ズキュン、と音さえ聞こえたような気がするわ。顔が熱くてたまらないんですがどうしたらいいですか。
< 41 / 100 >

この作品をシェア

pagetop