強引同期に愛されまして。
「お、お湯、沸いたね」
「おう。……コーヒー豆、どこだよ」
「え、えっとねー」
何してるんだ、私。こんなの、まるで高校生の恋愛みたいじゃないの。
キスまでの距離でドキドキするなんて、セックスまで済ませてからやることじゃないでしょう。
結局一瞬だけ生まれた甘い雰囲気は、あっという間に流れていき、湯気の立ったコーヒーを前に再び私たちは向かい合う。
「おいしい! 嘘、私が淹れるのと同じ豆だよね。味が違う」
「そうかぁ?」
「この間もおいしいと思ったんだけど。豆が違うんだと思ってた。え? 淹れ方? なんか違うの?」
「最初ちょっと蒸らすんだよ。あとは普通に淹れるだけ」
「それだけのことで? 嘘。すごい」
素直に感想を言っただけなんだけど、目の前の男はなぜか顔を背けていく。
「ちょっと何よ」
「いや。……別に」
よく見れば、耳まで赤い。
拗ねてるんじゃなくて、照れてる?
そう思ったら、こっちまでつられて恥ずかしくなってくる。
「……お前に褒められることなんてねーから」
やがてボソリとつぶやかれた言葉に、胸が突き刺されたような気がした。
ズキュン、と音さえ聞こえたような気がするわ。顔が熱くてたまらないんですがどうしたらいいですか。