強引同期に愛されまして。
「やりにくくはない? その、彼氏が担当営業だったりすると」
「私は平気ですけど、周りの方がちょっと気を使っちゃうみたいですね。まあ、今の仕事が終われば、彼の担当のものは他にないですし」
「でも岩田さんがやがて産休になったりしたら、あなたに仕事回さなきゃならないこともあるわよね。永屋くんは小さい仕事たくさんとって来るからなぁ。……そういえば岩田さんって、どうなの? 出産しても仕事続ける気あるって言ってた?」
この子に聞く話でもないのだけど、ふと思いついたので何気なく聞いてみた。
和賀さんは、眉をかきなおす私を鏡越しに見ながら、腕組をした。
「どうなんでしょうね。ちゃんとは聞いてません。でもお姑さんと同居らしいので、仕事は続けると思いますよ」
結婚や出産は、女性の仕事とのかかわり方には大きく影響がある。
正直、ここまで育てた社員がいなくなるのは戦力的に痛い。立場が上になればなるほど、それは他人ごとではなくそう思うわけで。だからこそ私は踏み切れないでいたわけだけど。
「ちなみに、和賀さんはまだ結婚とかないよね?」
「はい。今は仕事が楽しくなってきてるので、もうちょっと頑張りたいです」
「良かった」
ホッとして息をついたら、「でも私は、結婚したら辞めるかもしれないです」と爆弾発言が落とされる。
「ええ?」
「まだ迷ってるんですけど。器用じゃないので、両立できる気がしないんですよ」
「いやいや、もったいないわよ。やめないで。私、あなたはいずれ管理職にまで上がってくれるって思っているのに」