強引同期に愛されまして。
4.やっぱり恋は上手じゃない
どこをどうやって帰ったのか覚えていない。
ただ、動転していたのは間違いなくて、私は気が付いたら、自分のアパートの最寄り駅にいた。
「……ここじゃないじゃん」
そう思ったけれど、今の私の精神状態で、田中くんの家になんかいけるわけがない。
鞄の中の携帯は、先ほどから定期的に着信音とメール受信音が鳴っている。
着信もメールも梶くんからだ。
最初の着信を無視したら、メールが届いた。そのメールをみたら、切々と彼の今の気持ちが語られていて、見ているだけで胸が痛んだ。これ以上見たら気が狂いそうに感じて、その後は鞄の奥へとしまい込んだ。
まさかあそこで梶くんが食い下がるなんて思わなかった。
予想外の行動は、梶くんを“過去の男”から“見知らぬ男”へと変えてしまったようで、今、私はどうしたらいいのかわからないほど混乱している。
「でも行かないなら行かないで、連絡はしないとね……」
きっと田中くんだって待ってるだろうし。
しぶしぶ鞄から携帯を取り出し、画面に表示された最新の着信履歴が田中くんだったことに驚いた。
「え? 嘘。やば」
よくよく着信履歴を見れば、梶くんからの連絡は二通目のメールで終わっている。ちょうど、携帯を鞄に突っ込んだあたりだ。
それから後の着信三回とメール一回は田中くんからだったらしい。
最後のメールは【連絡よこせ】のひと言のみだ。