強引同期に愛されまして。
タイミングが悪かったなぁと恐る恐る電話を掛け直す。
「もしもし、田中くん?」
『お前、どこいるんだよ!』
案の定、田中くんはお怒りの口調だ。
ああもう、悪かったわよ。でも仕方ないじゃない、こっちだっていろいろあるのよ。
「ごめん、田中くんこそどこ?」
『まだ会社。夕方から成城学園に行ってて、いろいろあってさ。……それより、お前和賀さんとなんか会ったのか?』
意外な人物の名前が出てきて、私は思わず瞬きをした。
「和賀さん? なんで?」
『さっき永屋と話してるところ見ちゃったんだけど、三浦にまずいこと言っちゃったかもってオロオロになって話してたぞ? なにかあったのか?』
なにかって……あるとすればトイレでの会話くらい。
和賀さんがそんな風に感じるくらい、動揺が顔に出てたのかな。
「……別に。なにもないよ」
『だったらいいけど。連絡してやればどうだよ』
彼女を思いやる声にイライラする。
なんか、田中くんって和賀さんには優しいよね。
よく話しかけに行っているのを見るし、結婚観を話し合うくらい仲良くしてるってことでしょ?
思えば、なんで営業とシステム管理部でそんな飲み会とかしてるの?
初耳だよ、私のところにはそんな誘い、一度だってしてこなかったじゃない。
些細なことばかりなのに、今はそれが棘のように刺さって神経を刺激する。
苛立ちを抑えきれなくて、尖った声をだしてしまった。