強引同期に愛されまして。

「早く奥まで入ってください。はい、田中さん。コーヒー持ってきたからパソコンよけてくださいよ。こぼれたら壊れちゃうじゃないですか。三浦さんも、こっち座ってください」


初音がきびきびと仕切りはじめ、田中くんは渋々といった様子でノートパソコンを席ひとつ分離れた場所に移す。
初音が私にとコーヒーを置いた席は、田中くんがいる席の向かいで、図らずも顔を突き合わせなければならない状況が出来上がった。

でもコーヒーふたつ?
初音の分は?

とりあえず、気まずさを咳払いでごまかして、平静な顔を心掛けて初音のほうに向けた。
今は仕事中仕事中、と念仏のように繰り返す。


「……で、相談って何?」

「相談したいのは私じゃなくて、田中さんです」


言ったとたんに田中くんの顔に赤みがさし、立ったままの初音を軽くにらんだ。


「新沼っ」

「私は今は新沼ではなく九坂です。三浦さん、田中さんは例の成城学園のシステムのことで、相談があるそうです。昨晩の先方との打ち合わせで通信関係のハード機器の重要性とそこが高額になることに関しては了承してもらえたそうで。そこから先の話ですよね? 田中さん」

「……ああ」

「私にできるのはここまでです。話しづらいからってヘルプデスクに張り付かれたら迷惑なんですよ! 何があったか知りませんけど、田中さんが相談する必要があるのは私ではなく三浦さんですからね。よろしくお願いしますね!」


一気にそうまくしたてると、初音は荒々しく扉を閉めて出ていった。
冷静そうだったから気付かなかったけど、実は初音、ずっと怒っていたのか。
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