強引同期に愛されまして。
初音が出ていくと、会議室内は頭を抱えたままの田中くんと私のふたりきりだ。電話のベルとか、会議室の外の気配が感じられるくらい静かになっちゃった空間に耐えられず、私のほうから切り出した。
「……あんた、何やったのよ」
「別に朝からは張り付いてない。十一時からだ」
「ヘルプデスクだって暇じゃないのよアンタ……」
あの初音を怒らすとかよっぽどよ。
それにしても気まずいなぁ。田中くんは全然目を合わせてくれないし。
私も、自分の気持ちをちゃんと伝えなきゃいけないのはわかっているけど、仕事中に言うのもなんかためらわれる。
「……仕事の話でしょ。私に相談って何?」
「だから。その。システム開発のほうにかけられる金額が減ったんだよ。でも、前に言ったように、ハードだけ揃えてソフトが無いんじゃ顧客満足度は上がらないわけ。だからお前に、すごく効率のいいプログラムを作ってもらわなきゃならないんだ」
「……なるほど。つまり全体の金額は上げられないって言われたのね? でも無線LAN環境にはお金がかかる。だからソフト開発の方で下げろって言われたんでしょ」
「そういうことだ」
「やるしかないじゃない。そんなの別にヘルプデスクに相談しなくったって、直接私のところにもってこればいいでしょう」