強引同期に愛されまして。
正論だと思ったからそういったんだけど、田中くんは一瞬すごく嫌そうな顔をした後、右、左、上と三方向に視線をめぐらし、下を向いたかと思ったら、顔を押さえてぽそりとかすれた声をだした。
「……格好悪くて、言えるかよ」
いや、言えよ。仕事じゃないの。
と思うけれど、ときめきもまた半端ない。
なにこれ、照れてる田中くんってホント質が悪い。
「別に、格好悪くなんかないでしょう。こうなったのが、アンタのせいってわけでもないし。顧客と話し合って擦り合わせていったらそうなったってだけの話よ」
「まあそうなんだけど。……お前に言うってところに勇気がいるんだよ。……んだよ、平気な顔しやがって」
彼の視線が一瞬私をとらえる。すぐそらされたものの、熱のこもった瞳や軽く染まった頬に、こちらまで恥ずかしくなってきて、私の仕事モードも一気に吹き飛んだ。
「へ、平気なんかじゃないし。ただ、今は仕事中だから」
「だから俺だって顔合わせないようにしてたんだろ! なのに新島のヤツ」
「初音は悪くないわよ。迷惑かけたのアンタの方じゃないの」
やばいやばい。憎まれ口を言っていても、自分の頬が緩んでいるのが分かる。こっそり膝をつねったりしているけど、全然まともな顔になってくれない。
だってドキドキする。いつもの私なら、仕事の時に私情を挟んだりしないのに。
こいつが、そんなの関係なしに照れたりするから!
「それに……昨日はあんたが逃げじゃったから言えなかったたけど。梶くんとは本当に何でもないからね?」
会議室は一応密閉空間だから、ものすごい大きな声を出さない限りは他の誰にも聞こえないとは思うけれど、顔が熱くなってくるのを止められない。