強引同期に愛されまして。
田中くんはまだ疑いのこもった眼差しで私を見ている。
なのに、私が見返せばぱっと逸らされるから、こっちまでつられて照れてしまう。
無駄に顔は熱いし心臓はやたらと早鐘を打っていて、まるで無理やり青春時代に戻されたような居心地の悪い気恥ずかしさ。大人な私よ、早く戻って来て。
「元カレから電話とか……普通ないだろ」
「そんなこと言ったって、仕事でも使うんだから携帯番号はそうそう変えられないの」
「つか、お前のアドレス帳に元カレの番号が残ってんのがないだろって言ってんだよ」
「仕方ないでしょ。一応仕事相手だったんだから。またかかってきたときに『どちらさま?』とか言えないわよ」
反論しつつ、そんなことを怒っていたのかと思ったらまた顔が熱くなってきた。
なんだこいつ、私のことこんなに好きなんじゃんって、そう思えるのがうれしくてうれしくて仕方なくて。
「信じてよ」
彼の視線が戻って来る。見られていると思ったら、やっぱり私も恥ずかしくなってきて、彼の口もとあたりを見つめながら、小さな声で続きを言った。
「私だって、あんたのこと……す、好きだから」
会社で何言ってるのって思うけど、でも言えるのは今しかないと思った。
「本当か?」
さっきまでとは逃げ腰から一転して、彼は立ち上がり、私のそばまでツカツカ歩いてくる。
私が座っている椅子に手を掛け、無理やりに向きを変えた。ギギギと床とこすれた音がして、外に聞こえるんじゃないかと焦って顔を上げたら、めっちゃガン見してくる彼と目があった。視線が刺さるようだよ。なによさっきまで逸らしまくっていたくせに。