強引同期に愛されまして。
「ほ、本当よ」
「だって、お前の元カレってすげぇ顔良くてすげぇ性格もいいって、横須賀とかほかの女の同期は言ってたぞ」
梶くんの会社は取引先だから、一緒に仕事したメンバーは結構いる。横須賀さんもそのひとりだ。
梶くんとのデート中に横須賀さんに見つかったこともあって。思えば当時、私の彼氏が梶さんだと会社で噂されたのは、彼女のせいだったな。
「まあ、それは……そうね。梶くんは高スペックよ」
「そいつがまだお前のことを好きなんだったら……俺の出る幕なんてないのかって……」
ごにょごにょと、言いにくそうに頭をかく彼。
私は恥ずかしくて耐えられなくなってきて、彼の持っていた資料を奪い取り、細長く丸めて彼の頭を叩いた。
「いてっ、何すんだ」
「馬鹿っ。私、鍵受け取ったでしょ」
「……え」
顔が熱過ぎて、涙目になってくる。出る幕がないなんて言葉を、言わせたのは私だ。
馬鹿は私の方じゃない。自分のことばっかり考えて、彼が不安に思うだなんてこと、一度だって考えたことなかった。
「高スペックより、アンタがいいのよ。私がどうでもいい男と寝るような女だと思ってんの? 好きじゃなきゃあんなことしないんだからっ……」
資料を、握りしめていた手から抜きとられ、代わりに彼の大きな手に包まれる。
「……んだよ、だったら、最初っからちゃんと言えよ」
「人のこと言えるの? あんただって言ってなかった」
「言えねぇだろ。だって……」
その時、いきなり扉をノックされて、私もびくついたけど田中くんは飛びのいた。