強引同期に愛されまして。

「いつ?」 

「つい五分前」


だとすれば、まだエントランスまで行ってないかな。急げば捕まえられるかもしれない。
でもこの時間のエレベータはあまり混まないからもう遅いかな。

でも、追いつかなくても、修羅場になる前に止められるかもしれない。


「私、追いかけるわ」

「ああ。俺も行くよ」


「うん」と返事をしながら、私は走り出した。


「にしても、田中とはいつから付き合ってんの?」


後ろから聞こえる声には敢えて返事をしない。

いつからと言われれば、気持ちを確認し合ったのはついさっきだし、恋人なのか?という型にはまったのもつい一週間前くらいだ。
でもなんか、もうずっと前からだったような気がする。

エレベータのところで止まり、一緒に乗り込む。
運動不足の私はすぐに息が上がっちゃって、肩をゆらして呼吸いると、永屋くんは涼しい顔で私を見つめ、口元を綻ばせた。


「三浦、なんとなく変わったな」

「……そう?」

「梶さんと似合いの、冷静で落ちついたタイプだなって思ってたんだけど。今は、なんか表情もくるくる変わって、なんつーか……人間らしくなった」

「それって。まるで前が人間っぽくないみたいじゃないの」

「そう思えるくらい、お前、出来すぎだったんだよ。……それが田中と付き合って変わったのかなって思ったら、案外お似合いなんじゃん?って思って」


思ってもみない言葉に、顔が熱くなってくる。
他人から“お似合い”って言ってもらえるのって、こんなにうれしいものなんだ。


「……ありがとう」


自然にはにかむような顔になってしまって、口もとを手で隠すと、永屋くんはニヤニヤしながら続けた。


「田中って実は凄いよな。あの三浦をこんなに可愛くするんだから」


なによ、と言い返そうとしたところで、エレベータが一階につき、私は反論するタイミングを見失ってしまった。



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