鎖骨を噛む





私の家には炊飯器がない。だから、白飯を食べる時は、レンジでチンして作れるやつを使っている。レンジでお米が炊けるってホント便利。非常食として、チンしないでたべるなんてこともあるらしい。なんでこの世の中は、食に関して便利に満ち溢れているんだろう。



ただ、2人分のご飯をレンジに入れて、チンしながらこうも思う。私たち人間は植物や動物の命をもらって生きている。「いただきます。」には、そういう意味が込められていて、食事は人間にとって大事なことだ。そんな大事なことをこんなに手抜きでいいのかなって思う。弁当を買ったり、お湯を注いで3分のカップ麺だったり、外食したり。便利は、不便だったところの不満を言うばかりで、こういう大事なことを忘れてしまうことでもあるのかもしれない。



ご飯が炊けた。それを茶碗に移した。それから、フライパンに火をかけ、オリーブオイルを引いた。チリチリと音を立てて来た瞬間を見逃さず、卵を2つ、フライパンの上に落とし入れる。そして、水を入れて、蓋を閉めて蒸すようにする。こうすれば綺麗なターンオーバーの目玉焼きができる。私が小学生の頃に、母さんから教わった初めての料理だ。1、2分ほどで、白い膜が張った立派なターンオーバーができる。塩コショウを振って、フライ返しでご飯の上に乗せる。目玉焼き丼の完成!



「男飯みたい。」って笑われるかもしれない。私は健司を揺さぶって、起こそうとした。



「健司、朝ご飯作ったよー!」



健司は起きない。私は勢いと料理を作ったテンションに任せて、健司の身体にダイブした。



「うっ!!」



「ほーら、起きて起きて!」



健司は頭を掻きながら起きてきた。寝癖がすごくて、手入れを怠った松の木みたいにだらしなく広がっている。




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