鎖骨を噛む
「朝から……丼?」
健司は目の前に置かれた目玉焼き丼を目を細めて見た。
「そう。これしかなくってさ。黄身を潰して、その上から醤油をかけて召し上がれ。」
健司は言われた通り、黄身を箸で潰してその上から醤油を垂らして、茶碗を手に、口へと一口運んだ。
「どうかな?」
健司の動きが止まった。卵の殻でも入っていたのかな?
「……んまい。」
そう言って、健司は勢いよく丼を掻き込んだ。その姿に安心して、私も一口食べてみた。なるほど、美味しい。まるで、ちょっとおしゃれな卵かけご飯みたい。また醤油が見事にご飯を引き立てていて、醤油って偉大だなあって思う。
健司は米粒一つ残さず完食してくれた。よかった。食べ方が汚い人って嫌いだから。たまに行くファミレスで、隣に座っていた50歳くらいの二人の主婦が食べ終わった後の食器を見たら、すごく汚かったのを覚えている。あれは、食べきれなくて残したというより、子供がお子様ランチを食べ終わった後のような惨事だ。どういうしつけを受けて来たのか、またどういうしつけを子供にしているのか気になった。その点、うちの母さんは物凄く厳しかった。ご飯粒一つ残さないように食べなさいって教えられた。私の母さんがあの二人の主婦じゃなくて本当によかったと思った。
「ごちそうさま。美味しかったよ。」
そう言って、健司は自分の食器を流しに持って行き、茶碗を水に浸した。育ちがいいんだろうな……これは点数高いですよ、健司選手。