鎖骨を噛む
食器洗いを終えて、それから洗濯機の前に立った。洗濯物は、洗濯機に投げ入れていて、それが溜まったら洗濯をするようにしている。スイッチを押して、洗剤を入れていると、背後から健司が来た。
「バスタオル、これも。」
私は健司の洗い髪を拭いて湿ったバスタオルを受け取って、洗濯機に入れて蓋を閉めた。ゴオーン、ゴオーンと音を立てて洗濯機が回り始めた。その音を聞きながら、洗濯物を干す時のことを考えた。洗濯物を畳む時のことを考えた。憂鬱。今は洗濯するつもりでいるけど、洗濯機が止まった時には干すのがめんどくさくなっているかもしれない。干す時まで洗濯のモチベーションがあったとしても、干したものを取り込む時にはモチベーションが下がっているかもしれない。洗濯という行為をすべていっぺんに済ませてくれる便利はないものか……。せめて乾燥機でもあればいいのに。そしたら、後は畳むだけって腹をくくればいい。
マイプライベートルームに戻ると、すっかり黒いシャツを着終わっていた健司がフローリングの上で胡坐を掻いていた。
「花見でもする?」
突然の提案だった。でも、その突然の提案に私は乗った。
「よし、行こう!」
財布を持って、私たちは玄関を一緒に出た。もう鍵を開けっ放しにする必要はない。玄関の戸締りをしっかりとして、二人並んで歩いた。