鎖骨を噛む
平日だというのに、公園は驚くほど賑わっていた。春休み中なのだろうか、子供連れの家族が目立つ。
私たちは隅の方に咲いている桜の木の下にレジャーシートを広げた。思っていたよりも小さかったけど、二人で座る分には何の支障もなかった。そこで、コンビニで買ったのり弁を開けた。健司も私と同じのり弁だった。
「5分咲き……くらいかな?」
健司が桜を見上げながら呟いた。
「わかるの? 何分咲きかとか。」
「いや、わかんない。適当に言ってみただけ。」
結局のところ、この桜が何分咲きなのかわからなかった。もしかしたらこれで満開なのかもしれない。わからない。わからないけど、綺麗なのはわかった。ピンクに染まった木。その木の下でのり弁を食べる。二人並んでコンビニののり弁。のり弁は相変わらず美味しいけど、なんだか味気ないような気がした。
「次の花見もこうやって一緒に来れるかな?」
私はふと、そんなことを呟いてしまい、ハッとして健司の顔を見た。健司は桜を見上げたまま、笑っていた。
「そうだね。来年は、のり弁じゃなくて、りさ弁が食べたいな。」
「りさ弁?」
「りさが作ったお弁当のこと。」
「うん……頑張る!」
本気で料理の勉強をしようと決めた。好きな人のためならきっと何でもできる。お弁当くらいパパッと作れるようになりたい。作ったお弁当を頬張る健司を見たい。「美味しいよ!」って言って笑ってくれる健司を見たい。そんな健司とずっと一緒にいたい。