鎖骨を噛む
14 二人でジグソーパズル
花見を終えて、家に帰って来ると、しまった! と思った。
洗濯をしていたのをすっかり忘れていた。慌てて、洗濯機の蓋を開けると、むわっと何とも言えない部屋干しした時の生乾きの匂いが漂ってきた。
「やり直すか……畜生!」
再びスイッチを入れて、それから洗剤を入れて、洗濯機がゴオーンゴオーンと音を立てるのを聞いて、マイプライベートルームに戻った。
健司は机の上にさっき100均で買ってきたビーチのジグソーパズルを広げていた。
「ちょっとずるいー! 私もやる!」
私は健司の対面に座って、ジグソーパズルのピース、一つ一つを手に取って見た。思っていたよりも小さくて、くしゃみをしたら飛んで行きそうなほどだった。そして、きっと忘れた頃に部屋の隅の方で見つかるんだろうな。まるで、足の爪切りで飛んで行った爪みたいに。
「オレ、海とか空とか青系を集めるから、りさはとりあえず、砂浜とかの茶色系集めてくれる?」
「ラジャー!」
私は言われた通り、砂浜であろうピースを集めた。黙々とした単純作業。でも、こういうチマチマしたこと、嫌いじゃない。むしろ、バカな私にとって、頭を使わなくていい単純作業は向いていると思う。
「ねえ、健司。これでお金稼げたらいいって思わない?」
「ジグソーパズルで?」
「そう。ジグソーパズルをするのは面倒だけど、インテリアとして飾りたいって人から依頼を受けて、私たちが代わりにジグソーパズルを作るの。」
「でもそれって、ジグソーパズルの醍醐味をオレたちが奪っちゃうことにならない? ジグソーパズルは自分で組み立てた証として飾るんだよ。で、その飾ったものを見て、完成させたときの達成感を思い出して楽しむんだ。」
「一度で二度美味しいみたいな感じ?」
「そんな感じ。」