鎖骨を噛む





ピースをある程度選別できたところで、今度は枠組みを作っていく。四方に角のピースを置いて、辺となるピースを合わせていく。あれでもない、これでもないって悩んでいる時に、ふと「これかな?」と思ったピースを合わせて、それが見事繋がった時の喜びったらない。思わずガッツポーズが出る。



「りさ。ここのやつ、どっかにない?」



「待ってね……あ! これは?」



「はあ? 全然違うじゃんか!」



「なんで合わせてもみないでわかるの?」



「どう見たってこの模様にこれが合うわけ……あ、ハマった。」



「ほらー! 健司ってさ、ジグソーパズルのセンスないよね。」



「ジグソーパズルにセンスもクソもないよ!」



なんて言い合いをしながらも、着々と作業は進み、枠組みが完成した。あとは、中を埋めていくだけだ。



でも、これがなかなか苦戦する。特に青系のところは難しい。このピースが空の青なのか、海の青なのかわからない。実際の地平線を見ても、どこから空でどこから海なのかわからないのに、パズルでわかるわけがない。でも、それくらい同じようなものだから、まるで実際にパッケージに描かれているようなビーチに来たつもりになる。きっと健司は砂浜のこの辺に座っていて、私はちょっと先のこの辺でプカプカ浮いているんだろうなって感じで。



「健司は海に行ったことある?」



「あるよ。瀬戸内海だけどね。」



「実は私も瀬戸内海しか行ったことないんだよね。」



「あれ? りさって東京の人じゃないの?」



急に現実に引き戻される。そうだった。健司は盗撮している記憶がないんだった。でも、その記憶は私が黙っていれば、存在しないものになる。だから私が黙っていればいい。墓まで持って行って、それで終わり。




< 108 / 148 >

この作品をシェア

pagetop