鎖骨を噛む





私はスキップをしながらバックヤードに入った。バックヤードでは、佐藤さんが着替えているところだった。



「佐藤さん!」



「ああ、りさちゃん。おはよー!」



佐藤さんは軽く右手を挙げた。



「ありがとうございます! 店長に言い訳してくれたんですね!」



「まあね。店長が、『りさちゃんが全然電話に出てくれない!』って怒ってたから、適当に嘘言っておいた。」



「ホント、助かりましたよー!」



私はロッカーを開けて、「研修中」のマークがついた制服に着替えた。



「それで、実際はなんで休んだの?」



「まあ、いろいろと……。」



「もしかして、男?」



「へっ?」思わず変な声が出た。



「そんなわけないじゃないですかー!」



「別に隠さなくてもいいじゃん。タバコの匂いが微かにしてるよ? それとも、パチンコに行った帰り?」



ああ、匂いですべてバレてしまうもんなんだな……。時間もあるし、佐藤さんには恩もあるし、何よりも私自身が誰かに惚気たいし、言ってしまおう。




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