鎖骨を噛む
10分後、理系のクソ大学生が、またお越しくださいました。
「すみません、箸入ってなかったんですけど。」
当たり前だ。入れてなかったのだから、入っているわけがない。理系の大学生にもなって、そんなことも知らないのかしら。
「……。」
無視をして、後ろのタバコの箱の整理をする。10箱入りの箱(カートンと言うらしい。)からひと箱ずつ取って、足りない銘柄のところに、差し込んでいく。番号の書いてあるところは、バネになっていて、一番前のタバコを取ると、後ろのタバコが自動的に前に出てくる仕組み。ホント、これ開発した人、すごい。
「あのー、箸が……。」
箸、箸うるさいなあ、もう。お前の家には箸はないのか?
仕方なく、対処してやる。
「すみません、お客様。お箸だけお渡しすることは、できないんですが……。」
「いえ、さっきお弁当買ったんですけど、お箸が入ってなくて……。」
そう言って、袋の中から弁当を見せてくる大学生。
「なら、レシートはお持ちですか?」
「へ?」
「レシートです。レシートがあれば、そのお弁当をこのお店で買ったという証明になりますから。」
大学生は持っているわけがない。私はここまで計算して、さっきのレシートはゴミ箱に丸めてポイッしちゃってる。
「……もういいです。」
大学生は、乱暴にドアを開けて、そのまま店を出て行った。取り乱しちゃって、みっともない。あれは、彼女いないだろうし、できないわね。
ま、人のこと言えないか。