鎖骨を噛む





私は、押入れの上にあったカメラを背伸びをして外して、こたつ机の上に設置し直した。



それから、スタンドミラーでメイクが崩れていないか確認……よーし! そして、発声練習。「あー、おっほん、あっあっあー!」よーし!



そして、カメラを前になぜか正座をする。噺家さんみたい。



「ムルソーさん、はじめまして。りさって言います……って言っても、手紙に書いたから、もう知ってますよね……。」



傍から見たらただの独り言だ。客観視した自分を想像すると、恥ずかしくなって、言葉が詰まってしまう。



「まず初めに、カメラの位置を勝手に変えてごめんなさい。でも、私にはこのカメラがあって、このカメラを通して、ムルソーさんに何か伝えられるんじゃないかなって……はい。」



はい。何言ってんだろ、私。




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