鎖骨を噛む
「拝啓 りさ様 最初の手紙で、この部屋を自由に使っていいと書いてあったので、どうかとは思いましたが、パソコンを使わせてもらうことにしました。」
ああ、パソコンを使ったのか……。まあでも、見られて困るようなものはないし、それにネット環境もない。パスワードも設定してなかった。自分でも時々、思う。なんで、パソコンなんて買ったんだろうって。
「理由は、撮影データを見るためです。他の用途には使用していません。そんなこと信じられないかもしれないですが……。」
ネット環境がなくても、データは見れるんだ……。初めて知った。ホント、私なんかがパソコン持ってるよりも、ムルソーさんが持っていた方がこのパソコンも喜ぶんじゃないかな。可哀想なパソコン。
「すると、あなたからのビデオレターのようなものが出てきて、こうして手紙を書くことにしました。急いでコンビニで買ってきて揃えた茶封筒と便せんで申し訳ありません。」
しまった! そういえば、せっかく大学ノートやら、ボールペンやら、ホワイトボードを買ってきたのに。家を出る前に、出しておけばよかった。無駄なお金を使わせちゃって、ちょっと罪悪感。
「私はあなたに謝ってばかりですね。せめてもの罪償いとして、今日中に返事を出すことにしました。」
そんなに無理しなくてもいいのに、ムルソーさん。私の方こそごめんなさいだよ。バカで、気が利かないブスって、ホント最悪だよね……。ごめんなさい。