鎖骨を噛む
「お返事、ありがとうございました。嬉しかったです……じゃなかった。あ、いや、嬉しいのは嬉しかったんですけど、なんか、便箋まで買わせちゃって、すみません。」
話すことをあらかじめメモに書いておけばよかったと思った。でも、もう遅い。
「今日はバイトの日です。頑張って稼いで来ます!」
何の宣言なんだろう。バカみたい。
「あ、あと、えっと……。」ノートとボールペンを手に取った。
「毎回便箋を用意させるのは、何だか悪いので、ノート買って来ました。ここにお返事を書いてください。あ、でも、面倒だったらいいです。」
謎の宣言をする前に、まずこっちを言えよ、私……。
「それから、ムルソーさんの自己紹介で、私が気になっていることがあって、ムルソーさんの名前の由来の、『太陽が眩しかったから。』っていうのは、どういう意味なんですか? バカでごめんなさい。でも、晴れていれば、太陽は眩しいのが当たり前で、『ムルソー』なんて、どこから出てくるのか……もしかして、何かの暗号なんじゃないかって、いろいろ考えてみましたが、わかりませんでした。よかったら教えてください。」
これはちゃんと言えた。なんで盗撮されているのか、なんで私だったのか、なんてことよりも、今はそれが一番きになっていることなのだ。普通じゃないのよね、私。