鎖骨を噛む
「んー? そのロープはなんだ?」
右手に持っていた赤いロープを、ムルソーさんは無理矢理ひったくった。盗撮だけじゃなくて、ひったくりも向いてそう。
「これでオレを縛るつもりだったのか?」
何も言えない。でも、言わないってことは、肯定したと同じこと。ムルソーさんは、私の頬を強く掴んだ。
「どうなんだって聞いてんだよ!」
怖い、怖い、怖い……やっぱり、盗撮魔は、盗撮魔で、よくわからない人間。何をしでかすかわからない、人間だ。男の人って怖い。すっごく怖い。でも……。
この感じ、悪くない。そう思ってる私が一番怖い。