鎖骨を噛む





「んー? そのロープはなんだ?」



右手に持っていた赤いロープを、ムルソーさんは無理矢理ひったくった。盗撮だけじゃなくて、ひったくりも向いてそう。



「これでオレを縛るつもりだったのか?」



何も言えない。でも、言わないってことは、肯定したと同じこと。ムルソーさんは、私の頬を強く掴んだ。



「どうなんだって聞いてんだよ!」



怖い、怖い、怖い……やっぱり、盗撮魔は、盗撮魔で、よくわからない人間。何をしでかすかわからない、人間だ。男の人って怖い。すっごく怖い。でも……。



この感じ、悪くない。そう思ってる私が一番怖い。




< 71 / 148 >

この作品をシェア

pagetop