鎖骨を噛む
「なんかこういうのって悪くないね。」
彼はふと、そんなことを言った。
「何が悪くないの? ロープで縛られる趣味があるの?」
「そうじゃなくて、普通、拉致監禁ってさー、いい歳したおじさんが少女をっていうのが定石だろ? それが逆……いや、オレはおじさんって歳でもないから違うかもしれないけど……。とにかく、こういう逆パターンもアリだなってさ。キミ、可愛いし。」
男の子ってずるい。なんでこんな恥ずかしくなるような、動揺させることをサラッと言えるんだろう……。ホント、ずるい。もう、愛くるしい。
「私が可愛い? あんた、どうかしてんじゃないの?」
とか強気に言いながらも、顔はきっと真っ赤になってるはず。
「ツンデレってやつ?」
図星。もう、恥ずか死んでしまう。この恥ずかしさを消したい。
私は彼の胸を思いっきり蹴った。その拍子に、彼は倒れ込み、そのまま胸を足で踏みつけた。
「勘違いしないでよね? あなたは今、私の支配下にあるの。ある意味、人質ってこと。その気になればあなたなんか簡単に三途の川に送ることができる。わかる? この状況。あんまり調子に乗ってると、楽に死なせないわよ?」
「……わかった。」
わかってくれたあー! 中二病全開のセリフで恐怖心を植え付けることに成功したあー! いやあ、もう奇跡に近いよ、これ。「楽に死なせないわよ?」ってなんだよおー! 自分で言っておきながらだけど……。