鎖骨を噛む





もうなんか、どっと疲れた。今何時? やばっ、もう20:00回ってるじゃん。どうりでお腹空いてると思った。



「あなた、お腹空かない?」



「あ、空きました。」



彼は急に敬語になった。よっぽどあの中二病発言が効いたんだな……。なんか気の毒。



「ピザでも取ろうと思うんだけど。」



「僕も食べていいんですか?」



もちろんいいに決まっている。でも、それをはっきり言ってしまうと、あの中二病発言が無駄になってしまう。ドS女王様キャラクターで帳尻合わせをするしかない。もう戻れない。数分後に戻りたい。



「いいわけないでしょ? でも、あなたに死なれると、困るの。だから、あなたには私の食べ残しを分けてあげる。」



私はスマホを開いて、マルゲリータピザのLサイズをネット注文した。ホントはMサイズで充分なんだけど、彼にも食べてもらいたいから敢えてLサイズにした。



「いい? 30分後にピザが届くけど、声を出すんじゃないわよ? 出した途端、殺すから。」



「わかってます。食べさせてくれるだけで明日の太陽を見ることができるんですから。この場合、声を出すことの方がハイリスクですし。」



「だいぶわかってきたじゃない。賢明な判断よ。」



私はホッと胸を撫で下ろした。声を出されちゃたまらない。彼を殺したくない。




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