鎖骨を噛む
11 孤独は麻薬





ピザって好きよ。特に宅配ピザが好き。



ネットで欲しいピザを注文すれば、熱々ですぐに届けてくれる。電話をしてなくてもいい。雨の日、外に出たくない時とか、すっごく便利。ただ、ちょっと高くて、なかなか手が出せない。だから、宅配ピザを食べる時は、特別な日って決めてる。



今日は特別な日。私のファーストキス記念日。そして、ムルソーこと、高橋健司をゲットした日。字義的な意味で。



箱を開けると、トマトとチーズの香りが鼻を撫でる。カリッと焼けたパン生地に、色とりどりのトッピング。1ピースを持ち上げると、チーズが落ちないようにか、吊り上げられないようにか、抵抗して、ニョイーンと伸びる。それを舌で舐め取るように切るのが好き。



口に運ぶ。ふわっと、もちっと、サクッとの三重奏が口の中で奏でられる。そして、トマトソースの酸味と、チーズの濃厚さ、ベーコンのジューシーさが絶妙で、とろけてしまいそうになる。頬がキュッと固くなって、じんわりとほぐれていく感じが、きっと「頬っぺたが落ちる」って表現になったんだなと改めて思う。



こんなピザに相性抜群なのが、コーラ。ペットボトルに入った、黒いしゅわしゅわ炭酸の甘いのを、喉を鳴らしながら流し込む。ラッパ飲みってやつ。それにしても、ラッパ飲みって言い方、なんかダサい。ラッパ自体がダサいんだと思う。それよりもトランペット飲みとか、トロンボーン飲みとかの方が渋いジャズっぽくてカッコイイ。且つクラシックの清廉さも兼ね備えていて、尚上品。




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