鎖骨を噛む





「それから、いろんな恋もしました。初恋は、小学3年生の時で、当たる前に砕けてしまいました。告白する前に、その子に彼氏がいたことを知ってしまったんです。」



「あー、それってあるあるよね。」



「小学6年生の時の恋は、相手が僕のことを好きらしくて、手紙をもらったり、サッカーの練習の応援に来てくれたりしました。その返事をするために、資料室みたいなところで、お互いのお友達と4人で話し合って、それで両想いかどうか確認したことは憶えています。」



「どういう感じ?」私は立ち上がった。



「私をその子だと思って、やってみせてよ。」



彼も足だけ使って立ち上がった。こうして見ると、縛られて立っている彼が滑稽に見えた。私は彼の上半身に巻き付いた赤いロープを解こうかとも思ったけど、やめた。



「こう、対面して、僕の方から……。」



「僕の方から?」



「『僕は、西田りささんのことが好きです。』って言いました。」



「そしたら、私はなんて言うの?」



「傍にいた友達とちょっと内緒話を始めて、それから僕に向き直って、『私もです。』って言うんです。」



「言えばいいのね? 『私もです。』はい。それから?」



「それで終わりです。」



「それだけ?」思わず上ずった声が出た。



「なんか可愛いんだか、つまんないんだかわからないわね。」



それから私たちは座って、彼は話の続きを話し始めた。




< 87 / 148 >

この作品をシェア

pagetop